以前、書いた架空の物語「ツノアリ、ツノナシ、レガシィ」の続編です。
西暦23xx年、人類はツノアリ、ツノナシ、レガシィの3つのアトリ(タイプ)に分類された。
当初、ツノアリの症状を突起状頭蓋骨変形症、通称、突変症(とつへんしょう)と呼んでいた。
突変症を発症した人の割合がまだ0.1%に満たなかったころ、見た目が鬼を連想させることや何らかの死に至る伝染病ではないかという疑いもあり、一部の地域で避けられたり、差別を引き起こしていた。
特に地方では発症者の割合が少ないため、周囲な人たちから奇異な目で見られ、都市部と比べ、酷いイジメや迫害を受けている人が多かった。一応、日本でも学校や職場での差別を禁止する特別法が制定されたが、あまり効果があるものではなかった。
それでも、ミュージシャンのミシェル・ジェイクスの呼びかけで卑屈になっていたツノアリたちは立ち上がり、各地で啓蒙ムーブメント「8月のサクラメント」を叫ぶようになった。また、そのころくらいから健康上の問題がないことが徐々に判明してきたことで突変症でない人たち側の警戒心が解かれるようになってきた。
そして突変症の発症者が世界人口の5%を超えたことが発表されたあたりで、ようやくツノアリが失っていた市民権を取り戻したと思えるような時代になった。そのころになるとツノアリの容姿を見かけることが日常であり、ツノはエクボや八重歯のような人によって発生する顔の特徴のひとつと捉えられるようになった。
「美人は3日で飽きる。ブスは3日で慣れる」と言うが、見た目というものは何回か会っているうちに気にならなくなるのと同じ理屈ではと解説する学者がいたが、ツノアリは人口の1/3近くになり、マイノリティーではなくなった西暦23xx年の現在ではツノアリの差別問題は過去のモノになった。
しかし、それでも差別する人は完全にゼロとはならず、ツノアリを侮蔑する言葉を大声で発する保守過激派の人たちによる事件が数年に1回は新聞の紙面を賑やかしている。
考えの違う人たちが集まって生きている以上、差別をなくすことは本当に難しい課題なのかも。
(Picture By Pixabay)
今週のお題「雛祭り」
男兄弟でひな祭りにはあまり縁がなかったですが、道明寺の桜餅は好きですね。この桜餅に欠かせない「桜の葉」ですが伊豆の松崎が全国のシェア70%だそうです。松崎といえば、古いですが牧瀬里穂主演の映画「つぐみ」やドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」のロケ地として使われるほど、程よい田舎の景色が楽しめます。機会があれば那珂川の桜並木を見に行きたいですね。