未来そうぞう日記

知的障害を持った息子と巡る日曜の東京、神奈川周辺の散歩、未来予想(妄想?)、そして気になる話題を報告します。

(ドラえもん二次創作)2034年-後編-

(前編はこちら)

 

「そして、二つ目は3カ月の入院期間に彼の才能の覚醒要因となった夢を見せること。」

出木杉の言葉を聞いた二人は天井を見た。

「亡くなる少し前、僕は彼からその話を聞いたんだ。昏睡状態の時、長い夢を見ていたと。自分の子孫が未来からタイムマシンで猫型のロボットを連れてきたこと。そのロボットが不思議な未来の道具で彼を助けてくたこと。そして、そのロボットと静香さんや君たちと一緒に冒険の旅に出たこと。例えば、時間を操作する風呂敷で恐竜の化石の卵を包んで孵化させた、、、」

「ピー助!」

二人は同時に答えた。

「そう、そのピー助を元の世界に返す冒険とか。また、偶然繋がった宇宙の果ての星で出会った、、、」

「ロップル!」「チャミー!」

「そんな名前だったんだ。。。どうやら、不思議な道具、彼らとの出会いに加え、君たちと冒険の記憶が野比博士の空想力、新しい世界を創造する力を与えたのではというのが私達研究所が出した結論です。

そして、この仮説を元に昏睡状態の野比博士の枕元で、昨年、私的使用が禁止された強力な催眠メソッドを用いて彼に語り掛けることでその長い夢を見させること。それがこの計画のもう一つのミッションです。」

「ということは俺たちが知っている、あの夢の詳しい話を聞かせて欲しいということか?」

剛田の問いかけに出木杉が頷き、

「僕の知っている情報はほんの僅かです。どうか協力をお願いいたします。」

と深々と頭を下げた。

「わかったよ、俺たちにまかせろ。」

ジャイアンにまかせたら、どんな話になるか、、、」

「なんだとー。スネ夫のくせに生意気だ。」

「相変わらずだな、剛田君は。。。」

白髪の還暦を過ぎた男たちはまるで小学生のように燥(はしゃ)ぎ、お互いの顔を見て大笑いをした。

 

-2-

 

「所長、もう一度考え直してください。あなた自身の精神体でなくても必要な情報をインプットした汎用アンドロイドの精神体で十分なのでは?」

神経質そうな白衣の男が話しかけた。

「あなたはこの研究所にまだ必要な存在です。考え直してもらえませんか?」

その問いに対し、

「いや、十分長生きをしたよ。僕はこの計画を確実に成功させたいのです。」

こども型アンドロイドと共に横たわる出木杉所長はマイク越しに答えた。

「別に僕はこの世からいなくなるわけではない。このDR-4051と共に55年前の世界へ冒険に行くだけですよ。悔いはありません。さぁ、カウントダウンを始めてください。」

静かに目を閉じた彼に一礼した後、白衣の男はスイッチを押して起動パスコードを呟いた。

 

-3-

 

「所長!」

少し興奮気味にドアを開けた男の先には、あの神経質そうな白衣の男が座っていた。

バチカンから荷物が届きました。中身は55年前から預かっていた封筒、消印も55年前で間違いありません。計画は成功しました。」

所長になったばかりのその男は荷物を受け取り、55年前にアンドロイドDR-4051が書いた中の手紙に目を通して叫んだ。

「小学生の野比博士が無事目覚めたそうだ。重量制限で子供型アンドロイドしか送れなかったが医師を説得出来て本当良かった。」

そして"彼"が好きだった窓越しの庭を眺めながら独り言をつぶやいた。

「計画通り、出木杉所長は責務を全うできたんですね。25年前、野比博士に作られた有機体アンドロイドDR-0001は進化に進化を重ね、タイムマシンの基礎理論を確立しただけでなく、自らタイムトラベルに成功したんですね。生身でないからこそ倫理的に許可が下りて実行できた偉業でもありますが、本当自分にとっては尊敬する"人間"ですよ、出木杉英才さんは。」

 

-4-

 

2年ぶりだね、剛田さん。相変わらず高級スーツが似合わないね。」

1年ぶりに剛田と再会した骨川が声をかけた。

野比家と書かれた墓の前で手を合わせていた剛田は振り向いて、いつものように答えた。

「66歳にもなり、そんな恰好しているお前に言われたくはないは。」

「ははっ。それにしても久しぶりの日本だけどやはり暑いね。そう言えば、1年前に亡くなった出木杉さんも墓が近いとか。」

「そう、この1区画上のお墓で眠っているぜ。噂によると野比家を見守れる場所で眠りたいという遺言があったとか。」

「そうか、、、そう言えば出木杉さんは独身だったらしいが、邪推だけど、彼は小学生のころからずっと静香さんに片想いしてたんじゃないかな。いつも、野比と歩いていた静香さん見てたからなぁー。」

「へぇー、気が付かなかったぜ。それより最近発売された子供アンドロイドDR-4051って小学生のころの出木杉に似てると思わないか?」

「確かにそうかも。ここ最近のアンドロイドは人間と区別つかないから、もし当時の出木杉と入れ替わっていて、僕たちに会っていたとしてもわからないかも。彼、人間ではないかと思うくらい完璧なところもあったし。。。」

「おぅ、そうかもなぁ。。。もし、のび太が言っていたタイムマシンが完成したら、50年前の世界に戻って確認してみたいな。。。」

 

(完)

 

 

※注意)

あくまでもこの小説は藤子・F・不二雄作の「ドラえもん」の二次創作であり、本編のドラえもんとは一切関係なく、いちファンである私が勝手に想像して書いた作品です。この作品を自分の作品であるとか、藤子・F・不二雄作であると偽って販売したり、WEBに公開することを禁じます。

f:id:dad_aslan:20220123163735j:plain