未来そうぞう日記

知的障害を持った息子と巡る日曜の東京、神奈川周辺の散歩、未来予想(妄想?)、そして気になる話題を報告します。

ガラパゴスな日本の住所(その1) 街区方式の住所

先日、アメリカのシティ郵便事情について話したが、今回は日本と世界の住所表現について語ろうと思います。

 

いきなり結論から言うと、日本の住所の表記ルールは世界的に見るとガラパゴス、特異なルールですね。しかも2つの点で。ひとつ目は「街区方式の住所」であること、2つめは「広い方から記載する住所」であること。

 

先ず、今回は前者について話したいと思います。

 

日本の住所は道路で挟まれた土地区画(街区)に〇〇町などの住所名が付与されています。これらは昔自分が勤めていた地図会社では大字・町丁目という表現してました。このことは日本人にとって極々当たり前ですが、世界から見ると違っています。

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世界の標準は下の図のように全ての道路に名称=ストリート名が付与されていて、住宅や施設が面しているストリート名が住所となります。下記左上部の家のように同じ土地区画(街区)内でも面している住宅によってAとBに分かれます。

日本の考えだと同じ区画内の住所が違うのは不思議と思うかもしれませんが、海外の人から見たら同じ通りに面しているの住所が違うのはかなり違和感を感じるそうですね。

ちなみに日本人から見ると特にややこしく思えるのは2つの道路に面している角地の住宅。この場合、大きい道路を優先するなど地方行政が決めたルールに従ってどちらか片方を選んでいるそうで、それほど難しくはないそうです。

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そして世界ではなぜストリート名を「住所」として採用しているかというと郵便事業に便利だからです。郵便制度そのものは千年以上も昔からあったのですが、主にその土地の有力者同士が手紙をやりとりるためのもの。近代的な郵便制度ができたのは19世紀のイギリス。それまでは宛名は〇〇地方の〇〇さんで済んでいたのですが一般の事業主や店など配達先が増えるのに従い、地方名だけでなくストリート名も併記するようになり、それが発展し、どんな小さい道路に郵便に必要ということでストリート名が付与されるようになったという話らしい。逆に言うとそれまでは住所が無くても困らなかったとも言える。基本、一生、多くの人は自分の住んでいるエリアで完結し、そのエリア以外の遠方の人と手紙をやりとりすることもなかったのだから。

 

一方、日本でも明治時代に近代郵便制度が導入されましたが、同時期に幕藩体制から明治政府による中央体制に移行するにあたり地租改正が行わました。田畑の所有者と地租の金額(土地に対する租税)を明確にするために改めて大規模な測量が全国で行われ,、このときに土地の区画単位に名称が付けられ、それが現在の「大字・町丁目」に繋がっています。そしてこの区画整備情報が住所にも利用されたというわけです。確かに折角良い整備情報があるのに、名称のない道路にストリート名を付与してそれを住民に馴染ませるように啓蒙する事業を予算をかけてわざわざしなかったためです。

 

ところで、ストリート名ではなく、土地区間の名称で記述する住所ルールを使っている国は世界的にも見ると日本以外にはないようです。以前、韓国では日本と同じようなルールでしたが17年かけて2014年からストリート名表記の住所に変更したそうです。

 

実は日本のような住所ルールにするためには区画の境界を明確にするための土地測量が必須となり、道路に名前を付け、それを周知するための標識を建てるだけで済むストリート名方式に比べると莫大な費用がかかるわけです。そうなると、当然多くの国はストリート名方式を適用するわけです。

 

山岳が多く、住める土地が狭い日本だから全地域を細かく測量することは容易だと言われたりしますが、2021年調査で190国中11位の人口の日本。そんな簡単なことでもないように思えますが、土木業界の強い日本ならではなのかもしれませんね。

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(つづく)