以前、書いた架空の物語「ツノアリ、ツノナシ、レガシィ」の続編です。
西暦23xx年、人類はツノアリ、ツノナシ、レガシィの3つのアトリ(タイプ)に分類された。
ツノナシの存在が明らかになったのは、ツノアリの存在が確認されてから数年後のことであった。そして、当然ながら最初はツノナシ、ツノアリという言葉はなかった。
見た目はレガシィと全く変わらない。当時の言い方をすれば「普通の人」だ。しかし、鬼骨を持ち、匂いでツノアリ、ツノナシとレガシィの区別ができる嗅覚を持っている点で、やはり当時の言い方をすれば「異能の人」だ。
ツノアリはその姿から差別され卑屈に生きていたが。しかし「8月のサクラメント」以降、その容姿にむしろ誇りを持つ人たちも出てきて、多くのツノアリがアイデンティティーを確立していった。
それに比べ、ツノナシは自身を中途半端な存在と感じ、ツノナシであることを隠そうとする人たちが多数いた。確かに匂いの区別ができないレガシィからは見た目も同じなので隠すことはできた。しかし、ツノアリに隠すことはできない。匂いは僅かなので、ある程度近くに寄らないとわからないが、すれ違いざまのちょっとした空気でわかったりする。
今までいじめられていたツノアリが強くなり、ツノナシを隠していることがわかった彼らをいじめる問題が世界各地で聞かれるようになった。
当時、ツノナシたちはCTスキャンや頭部レントゲンでも撮らない限り、自分たちがツノナシであることを知らない人もかなりいた。匂いで嗅ぎ分けができても、自分の服についた匂いを嗅ぎ取ることができるレベルの人は少数で、しかも他のツノアリが匂いでわかっても礼儀としてそれを言わないという暗黙のルールがあった。
しかし、ツノアリの勢力が強くなりだしたころ、中高生の間で隠れたツノナシを見つけるツノナシ狩りのような遊びが流行り、ツノナシのいじめや差別問題に発展していったのだ。
一方でこれがきっかけとなり、人口全体で見たとき、それまで少数だと思われていたツノナシが意外と多いことがわかってきた。
この後、医療目的も含め、各国政府主導のツノアリ、ツノナシの人口調査が本格化し、当時、ツノアリ、ツノナシがそれぞれ20%を超えることがわかり、このころを境にツノナシのいじめや差別による問題件数は急激に減りだした。
そして、23xx年の現代ではツノアリ、ツノナシ、レガシィの割合は同数になり、いじめ、差別問題はゼロではないがほぼなくなった。
結局、いじめや差別問題は「マイノリティー(少数派)」ではなくなることで解決に向かうことをここ100数十年の歴史を通じて実証したことになり、また、逆説的に20世紀から多数決での民主主義は理性をなくすと、簡単に悪い方向に行ってしまうリスクを証明したとも言えたのだ。
(Picture By Pixabay)
今週のお題「花粉」
個人的な症状かもしれませんが、働いているときは花粉症の症状はある程度抑えられるが、自宅に帰って気が緩むとどっと鼻水が出たりします。
リラックスできるとつらいといのは、何とかして欲しいですね。。。