ガラパゴスな日本の住所に関する話の第二弾。今回は住所の表記順番について。
日本では住所は広い方から表記、つまり、都道府県、市区町村、大字・町丁目、番地・号の順番に記述するルールです。
しかし、世界的に見たらこのルールはかなりマイナーで多くの国は狭い方から記述します。例えばアメリカならばハウスナンバー、ストリート、シティ、州、イギリスならばハウスナンバー、ストリート、(大都市では地区)、シティとなります。
日本と同じように広い方から記載するのは中国、韓国くらいですね。
なお、この例ですと上海市から記述しますが通常はシティの前に「省」が記述されます。上海市は直轄市と言って省と同じ権限を持つ特別な市なので、省がありません。日本の東京都に少し似ていますね。ちなみに北京、重慶、天津も直轄市です。
日本で広い方から記述するルールを適用している理由は個人的には把握していませんが考えられる理由は2つ。一つ目の候補は縦書き文化であること。番地などの数字から記述するのはかなり違和感がありますね。二つ目の候補は中央集権国家であること。国土全体を中央の政府が掌握し、段々と階層で分割していき、下の行政機関に権限を委譲していくような行政体制という感じで、権限が強いところから記述するというルールが自然だったのかもしれませんね。
また、中国ではストリート名を使う点はイギリスが上海に駐留したときの影響でしょうか。しかし、このとき記述順番は欧州とは合わせていないようです。これは日本と同じ理由もあると考えられますが、韓国も含め第二次大戦前の日本の支配力が強かったときにルールを日本に合わせたという可能性ですもありそうですね。
一方、欧州が狭い方から記述するルールを適用していますが、現地の人たちの話を聞いているとそもそも住所はハウスナンバーとストリートの情報だけで足りるならばシティすら書きたくないという文化があります。もちろん、多くの住居はその2つだけの情報で手紙を出していいわけではなく郵便番号は必須ですが、シティの記載は日本でいう都道府県だけ書いたり、市だけとか、区だけ書くとか国や地域、または人によって結構バラツキがありました。
これは国・地域によって地方行政の権限、影響力が違っていて、それぞれの人によって意識が異なるためのようです。日本でも自己紹介の時、浦和市民(区民)というか、さいたま市民、もしくは埼玉県民と名乗るかアイデンティティとして悩むのと同じだったり、知名度として愛知県民と名乗るより、名古屋市民と名乗ったほうがわかりやすいよという理由もあるそうです。ただ、各書類で日本のように都道府県、市区町村を書くように強制されなかったりするので、結構自由に書くようになったらしいです。
このため、昔海外ナビの仕事で住所データの仕様を現地地図供給会社と決めるときは本当苦労しました。ひとつの場所のストリートなのに複数の行政地名を同列で検索できるようにするが、正式行政名は国や都市ごとに仕様を個別設定する仕様を現地の観光ガイドブックやチェーン店のホームページなどを調査して昼夜検討してました。さらに正式ではない通称地名でも検索できるようにした地域もあったりと何でもありでしたね。
と、脱線しましたが、要するに大切なのはハウスナンバーとストリートということで、そちらを先に書くようになったのではと想像されます。
ちなみに、欧州以外のアフリカ、アジア、南北アメリカは欧州の植民地支配時に欧州のルールに合わせたという可能性が高いですね。